はじめに
配管と一口に言っても,その方式や用途は多岐に渡ります.
ねじ接続,フレア接続,フランジ接続,その他に溶接構造など,目的や要求性能に応じて適切な方式が選定されます.
その中でも,米国において広く普及している方式の一つが,Swagelokに代表されるダブルフェルール方式です.
この方式は,地上設備 GSE に関する実務標準であるSSTD-8070の文脈においても扱われることが多く,いわゆる「業界標準」として認識されている接続方式の一つです.
ここで一度,認識の共有も兼ねて用語の定義をしておきます.
◎ GSEとは何か?
GSE(Ground Support Equipment)とは,
ロケットや宇宙機の運用を地上から支える設備全般
を指します.例えば,
- ・推進剤の供給ライン
- ・加圧・パージ系統
- ・試験設備
- ・計測系配管
などがこれに該当します.
これらの設備では,
分解・再組立が可能であること
一定の信頼性を持ちながら柔軟に運用できること
が求められます.そのため,
溶接のような恒久固定ではなく,機械的接続で確実にシールできる方式
が重宝されます.
この要求に対して非常に相性が良いのが,ダブルフェルール方式です.
◎ なぜダブルフェルールなのか?
この方式は,
フロントフェルール(シール)
バックフェルール(保持)
の2要素によって構成されており,
締結操作のみでシール性と保持力を同時に成立させる
という特徴を持ちます.その結果,
- 再施工が可能
- 特別な溶接技能が不要
- 比較的安定した施工品質
といった利点があり,GSE用途において広く採用されています.
本記事の目的
とはいえ,このダブルフェルール方式について,
なんとなく締めているとか,メーカーの手順通りにやっているだけとか,仕組みを理解していない
という状態で施工されている現場も少なくありません.
しかしながら
構造を理解していないと簡単に性能を損なう可能性がある
という側面も持っています.
そこで本記事では,
Swagelok施工において最低限押さえておきたいポイントを7つに整理し,未経験者でも仕組みから理解し,応用に繋げられる形で解説します.
「手順」ではなく「構造」を理解すること.これが本稿の主題です.
1.Swagelokのしくみ
こちらの画像は配管につける部品です.

それぞれ左から袋ナット,バックフェルール,フロントフェルールという名称がついています.これがカシメられると...

フェルールが配管を締め上げて,配管の先っちょがちょっと太っていますね.
さらにこれは太っているだけでなく締められることで配管は先側に延びてもいるんです.
これに対してオスの継手を締結します.例えばこんなものがあります.
(左から,ティー,チェック,AN - スウェジ変換)



⇩⇩締結のイメージはこんな感じ⇩⇩

([<u>](https://www.swagelok.com/ja/blog/how-to-perform-tube-fitting-installation)[https://www.swagelok.com/ja/blog/how-to-perform-tube-fitting-installation](https://www.swagelok.com/ja/blog/how-to-perform-tube-fitting-installation)[</u><u>](https://www.swagelok.com/ja/blog/how-to-perform-tube-fitting-installation)[)](https://www.swagelok.com/ja/blog/how-to-perform-tube-fitting-installation)[</u>](https://www.swagelok.com/ja/blog/how-to-perform-tube-fitting-installation)
([<u>](https://www.swagelok.com/ja/blog/small-bore-tube-fittings-key-differences)[https://www.swagelok.com/ja/blog/small-bore-tube-fittings-key-differences](https://www.swagelok.com/ja/blog/small-bore-tube-fittings-key-differences)[</u><u>](https://www.swagelok.com/ja/blog/small-bore-tube-fittings-key-differences)[)](https://www.swagelok.com/ja/blog/small-bore-tube-fittings-key-differences)[</u>](https://www.swagelok.com/ja/blog/small-bore-tube-fittings-key-differences)
ナットを締めることでバックフェルール,フロントフェルール両方に対して軸方向に力が加わり,バックフェルールは塑性変形を起こして配管に食い込みます.そしてフロントフェルールも塑性変形を起こして継手と配管に対して面で密着します.(図で言えば黄色のとこ)
通常,ボルトなどでは締結トルクによって管理しますが,特にswagelokではナットの回転数によって施工品質を管理します.環境依存要素になる”摩擦”を施工のばらつき要素に入れない.これによってユーザ施工でも,市場製品としてロバストな精度を保つことができるのです.
2.この方式の強み
最初に申し上げた通り,ダブルフェルール方式はGSE用途で重宝されます.
その理由として次の要求がありましたね.
分解・再組立が可能であること
一定の信頼性を持ちながら柔軟に運用できること
配管を自由な長さに切って使用できるということは,ただ単に施工が楽になるからという理由だけではないです.
既製長さの配管をベースとする場合,余長の処理として曲げ加工が必要になりますが,この曲げは応力集中や施工ばらつきなどの原因にもなり,コストの面からも合理的とは言えない場面も存在します.
また最短長さでシステムを構成することで圧力損失やデッドボリュームの低減にも寄与することが可能となります.
一方でダブルフェルール方式では,必要な長さに切断し,そのまま接続が可能であるため
- 不要な曲げを削減できる
- レイアウトが完結になる
- 現場施工での応答性が良い
といったメリットが生まれます.
また,配管長を最短化できることは単なる取り回しの問題ではなく,配管内を流れる流体に対しても次のような利点があります.
- 圧力損失の低減
- デッドボリュームの削減
- 応答性の向上
GSEにおいては,一度構築した配管系を前提とするのではなく,試験内容や運用条件に応じて構成を変更することが前提となります.
上でも示した,
- 分解できる
- 再構成できる
- 再利用できる(条件に依る)
という性質に対してダブルフェルール方式は非常にマッチする方式と言えます.
一方で
航空機やフライトハードウェアで使用されるAN系の接続では,チューブ端部をフレア加工することで接続を成立させます.

左:AN,右:swagelok 変換継手
この方式は,チューブ端部の形状そのものをシール機構として利用する構造のため,余計な継手が入る余地はなく,比較的軽量でありながら高い信頼性を確保しやすいという特徴を持っています.実際,フライトハードウェアのように極限環境下での運用が前提となる領域では,合理的な選択となるケースが多いと言えます.
ただしその一方で,この方式は加工を前提とするため,どうしても施工に専用工具が必要となり,加工精度がそのまま性能に直結します.
また,一度フレア加工を行ったチューブは基本的にその形状が前提となるため,現場での再構成や調整の自由度は高いとは言えません.この点は,GSEのように構成変更が前提となる設備とはやや相性が異なる部分です.
近年では,チューブをフレア加工させるツールも比較的安価に存在しますが,それでもなお本質的には「加工を伴う方式」であることに変わりはありません.
ここでダブルフェルール方式に目を戻すと,現場において特別な加工設備を必要とせず,施工精度を作業者の腕にできるだけ依存しないというのは明確に差別化された利点になります.
さらにこれは単に「施工が楽」という話ではなく,運用全体で見たときのコスト構造にも直結します.特に試験設備のように,配管の組み替えや再構成が頻繁に発生する環境では,この差がそのまま運用効率の差として現れます.
ただしこの話は,どの方式が優れているかという二元論的なはなしではなく,
設計・施工・運用をどのように分離し,どこで品質を担保するか
という思想の違いとして捉えられるべきものです.